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(微ネタバレ有り)映画批評ゼミの大学4年生が選ぶ『映画大好きポンポさん』見どころ三選

 

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 『映画大好きポンポさん』を見てきた。完全にノーマークで原作も知らなかったが、映画を見てきた知人の評判が揃いも揃って良いので見に行くしかなかった。

 公開から1ヶ月ほど経ち、なかなか上映している劇場が少ない。なんとか昼間にやっているところを見つけ、急いで行ってきた。

 結論、おもしろかった。今年は劇場で映画を見る機会があまりなかったが、今年一の面白さだった。魅力的なキャラ、テンポのよいストーリー、映画を作るストーリーの映画ならではの重箱構造を巧みに利用していて、楽しく見ることができた。

 ここでは『映画大好きポンポさん』の見どころ三つを紹介しようと思う。

 

あらすじ

劇場アニメ『映画大好きポンポさん』公開直前PV - YouTube

敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈になる毎日。だが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりに没頭する楽しさを知るのだった。 ある日、ジーンはポンポさんから次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡される。伝説の俳優の復帰作にして、頭がしびれるほど興奮する内容。大ヒットを確信するが……なんと、監督に指名されたのはCMが評価されたジーンだった! ポンポさんの目利きにかなった新人女優をヒロインに迎え、波瀾万丈の撮影が始まろうとしていた。

https://pompo-the-cinephile.comより引用

 

個人的見どころ三選

 

1.ポンポさんの「凄み」

 映画制作の話だと聞いていたが、まずビックリしたのは普通にハリウッド(作中ではニャリウッドと呼ばれる)映画の話だった。当然日本人ぽい名前の登場人物は出てこないし、作中でよく出てくるノートも全部映画だ。

 ポンポさんは愛称であるのだが、フルネームは「ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットJoelle Davidovich Pomponette)」であり、その略称だ。

 このポンポさん、映画冒頭からすでに当然の如く映画プロデューサーであり、みんなポンポさんのことを慕っている。

 冷静に考えてこんなトンチキなかっこうをした幼女が相当な地位にあるのは違和感しかない。地位の理由は、名映画プロデューサーを祖父に持ちその遺産を全て受け継いだという設定だ。けれどもその設定以上に、作中のポンポさんの圧倒的なカリスマ性や敏腕ぶり、そして彼女を演じる小原好美さんの好演も相まって、「そりゃあ、みんなこの人に付いていくわ…」と納得するしかなくなる。

 圧倒的にフィクショナルなキャラクターであるポンポさんが物語の進行を支えている。加えて登場人物もみんな良い人で余計な障壁がない。

 思想家のD.グレーバーが現実とフィクションの違いは書類手続きの多さと言っていたが、まさにアウトサイダーなポンポさんが全書類手続きを引き受けることによって、物語がテンポよくストレスなく進んでいるのだ。ゆえにポンポさんがちゃんと凄くないとこのアニメの土台が成立しない

 それを成立させている超人(もはや人ではない)ポンポさんの「凄み」に注目だ。

 

2.「三つ」の映画の交わり

 劇中で映画を作る話なので、当然劇中映画と映画のストーリーをクロスオーバーして見てしまう。

 『映画大好きポンポさん』は一言でいうと社会不適合者の映画狂のジーンが、ポンポさんに才能と性格(?)を認められて、監督として映画を作る話だ。

 その映画は『MEISTER』。落ちぶれた天才音楽家が、田舎である少女に出会い、田舎での生活を経て成長し、再起する話だ。

 この主人公2人の境遇は重なるところが多い。いわば世間を爪弾きにされた者同士のシンクロだ。

 あくまで示唆的だった2人の心情が、どんどんひとつに重なっていく。その近づいていく過程にアドレナリンが湧き出る。そんな2人を物語がひとつになるシーンは圧巻だ。そして物語は新たな局面を迎える。

 いままで劇中映画『MEISTER』とストーリーの関連を指摘してきた。ならば見出しの3つ目の映画とはなんのことであろうか。

 答えはこの映画自体、つまり『映画大好きポンポさん』という映画のハードの部分のことだ。ストーリーの内容だけでなく、ハードの部分をメタ視点で見てほしい。

 劇中でポンポさんは自分つくる映画の3つの流儀を唱えている。詳細は映画館で確認してほしいが、その流儀に作中でジーンはどう応えたのか。また『映画大好きポンポさん』自体はどうなのか。そこに着目して見てほしい。

 

3.アニメならではのアクション

 映画監督の最大の仕事とはなんであろうか。答えは編集である。カットの繋ぎ合わせ、せっかく撮ったシーンを切ること。パソコンの前でカタカタカタカタ、黙々と進めるこの作業である。

 正直言ってこの作業は地味だ。パソコンの前での作業は映像映えしない。それこそ地味な事務作業として大幅カットされる仕事だ。

 しかしこの映画はアニメーション。しかも映画監督にフィーチャーした映画なだけあって、編集作業は最大の山場である。

 ならばこうするしかない。地味な編集シーンを派手なアクションシーンに変えてしまえばよいのだ。

 というわけでぜひ劇場で編集という名のアクションを体感してほしい。これこそアニメならではの表現技法である。

 

まとめ

  • フィクションに説得力を持たせるポンポさんの凄み
  • 作中映画とストーリーとこの映画自体の関連
  • 地味な編集作業をアニメでどう「魅せる」か

 以上の3つに注目すると1.5倍楽しく『映画大好きポンポさん』を見られるかも。

 もう上映館数が少ないので急いで見に行きましょう!!!